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某魔法学園に生息する『瀕死の黒妖精』の背後ブログ。中身がダダ漏れ超えて、もはや剥き出し。       *この中ではPC様同士の面識があれば横レス可とさせて頂きます。
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黒妖精背後
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非公開
自己紹介:
黒妖精と違って、のんびり平和に生きてきた「へたれ」。
自称「物書き」だけど、単なる趣味。
2キャラ稼動で、バタバタと遊んでおります。
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柔らかな陽の光の差し込む寝室。アルーシャと俺と、子供達の家。
清潔なシーツの敷かれたベットの上に寝転がって、俺はぼんやりと天井を眺めていた。
窓の外から聞こえてくるのは、末の孫の少し調子外れな歌声。
違う違う…と笑いながら直してやる、アルーシャの声が響く。
穏やかな穏やかな時間。


ソレンティアで過ごした日々から、一体何年が経ったのだろうか。
資格を得、共に学園を出たアルーシャと俺は妖精界中を旅して回った。
旅をやめてからは、親父の家に程近いこの場所に家を建てて…。
最初の子供を引き取ったのは、確か旅の終わり。
母親を失って泣き喚く、物乞いの子供を連れて帰った。
戦災孤児,捨て子。それから更に何人かの子供を引き取って…。
子沢山だ…と俺達をからかいつつも、孫達に囲まれて嬉しそうだった親父。
その親父も、かなり前に他界して、今は村を見下ろす墓地の片隅に眠っている。

やがて、一つ…また一つ…とあの頃の友人達の訃報が手元に届き始め…
あの世でみんなが集まったら、きっと賑やかだろうな~などと話しながら、杯を宙に掲げた。
そうして俺も…ここ最近、身体の自由が利かなくなり、
ベットの上で一日を過ごす事が増えている。
およそ150歳という自分の年齢を考えれば、それは当たり前の事で
家族たちに囲まれながら、俺は本当に穏やかな毎日を送っていた。


…それでも…

ゆっくりと身体を起こした俺は、枕の下から一冊の小さなノートを引っ張り出す。
誰にも…アルーシャにでさえも見せたことのないそれは、
こうして、思うように身体が動かなくなってから綴り始めたものだった。
アルーシャに出会うまでは、傭兵として過ごしていた自分。
それは俺の人生の中では、決して長い時間ではなかったのかもしれないけれど…。
…俺には、この穏やかな時間が怖かった。
数え切れないものを傷付け、奪ってきた自分が、こんなに穏やかな時を過ごして良いのか…。
どれほど馬鹿げていると分かっていても、俺は、その考えを捨てることができないでいる。
だから俺は文字を綴り始めた。
記憶にも留めていない仕事のほうが多かったが、
それでも、覚えている限りの事を書き付ける事にした。

決して消えないものたちが、ひとつひとつノートの上に移っていく。

そうして小さなノートが埋まる頃、俺の睡眠と覚醒のリズムは、だんたんと曖昧になっていた。
ノートの最後のページ。強張った指を動かして、俺はそこに魔法式を刻む。
アルーシャ以外の誰かがこのノートを開いたら、即座にノートの燃える魔法式。
俺はそのノートを戸棚の奥へと、こっそりとしまい込んだ。


「フィス?」
優しい声が俺を呼ぶ。
目を開けると、いつもと変わらぬアルーシャの笑みがそこにあった。
妙に眩しい視界。アルーシャの顔以外、もう何も見えない。
頬を撫で、その頭を腕の中に抱きこむ。
「……泣いても良いぞ?」
泣き虫なアルーシャ。涙は出ないと言うけれど…
何故か俺には、昔からアルーシャの涙が見える気がした。
「最後じゃない。絶対……だから、泣かない」
顔を上げたアルーシャの見せる極上の笑顔。
「……愛してるよ」
笑った顔も、泣いている顔も…全て。
俺に向けてくれる気持ちごと…。

大丈夫…もう何も怖くはない…

「愛してる……待ってて」
額に落される口づけ。
柔らかな感触に微笑みながら、俺はいつもと変わらぬ眠りに落ちていく。
…ただ、少し長いだけの…


棚の奥のノートを、アルーシャはきっと見つけるだろう。
目を通したら「ば~か」と言って笑うに違いない。
だから…最後に綴った言葉は「有難う」だった。


「フィス……」
静かな声が俺を呼ぶ。
家を見下ろせる墓地の片隅。
座り込むアルーシャを腕の中に抱きしめて、額にキスを落す。
「お疲れ、アル」

道が見える。二本の道が。
細く暗い道と、明るく暖かな道。
暗い道は常に傍らにあって、俺を惑わし続けてきたけれど…
もう俺は、そこに目を向けることは無いだろう。

「次はどこへ行く?」
旅の途中、何度も交わした問い。
答えは笑いながら…
「決まってんじゃん。みんながいるところだよ」


 Abide with me; fast falls the eventide;
 The darkness deepens; Lord with me abide.
 When other helpers fail and comforts flee,
 Help of the helpless, O abide with me.

 Swift to its close ebbs out life’s little day;
 Earth’s joys grow dim; its glories pass away;
 Change and decay in all around I see;
 O Thou who changest not, abide with me.

 I need Thy presence every passing hour.
 What but Thy grace can foil the tempter’s power?
 Who, like Thyself, my guide and stay can be?
 Through cloud and sunshine, Lord, abide with me.

 Hold Thou Thy cross before my closing eyes;
 Shine through the gloom and point me to the skies.
 Heaven’s morning breaks, and earth’s vain shadows flee;
 In life, in death, O Lord, abide with me.



  どうか私と共に…
  日が暮れて闇が深さを増すときも
  導き手たるあなたよ どうか私の傍らにいてください
  手を差し延べる者もなく 何の慰めもないときも
  救いなき時の救いよ どうか私と共に…

  命のささやかな日々は 終わりへと移りゆき
  地上での喜びは薄れ 栄光も過ぎ去って行く
  目に映る全てのものが 姿を変えていくときも
  変わることなきあなたよ どうか私と共に…

  いつのときも 私にはあなたの手が必要なのです
  あなた以外の誰が 私を闇から救い
  あなた以外の誰が 常に側にいてくれるというのか
  曇る時でも晴れるときでも どうか私と共に…

  閉じた瞳の前に あなたの証をかざしてください
  それは闇を貫いて輝き 空をの向こうを指し示す
  その先の地が拓かれ 全ての影が過去へと消えるとき
  生きる時も死にゆくときも どうか私と共に…

*埋め込み動画の歌詞と掲載歌詞に一部相違があります。ご了承ください。
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