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某魔法学園に生息する『瀕死の黒妖精』の背後ブログ。中身がダダ漏れ超えて、もはや剥き出し。       *この中ではPC様同士の面識があれば横レス可とさせて頂きます。
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黒妖精背後
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黒妖精と違って、のんびり平和に生きてきた「へたれ」。
自称「物書き」だけど、単なる趣味。
2キャラ稼動で、バタバタと遊んでおります。
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だいぶ前に書いていたSS。
本家のSS郡と微妙に関連があるような、無いような感じですが…
ココを逃すと出しそびれる気がするので放り出してみます。
 
非常に僭越ながら注意書き。
 
・シリアス系の死にネタです。

・苦手な方、不快感を感じる方は閲覧をご遠慮頂けるようお願いします。

・当サイトのURLとパスをご存知無い方にSSの内容をお話することはお控えください。

・また、ここでお読みになられた内容はL様情報としていただき、
 当人から語られない限りは、C様には反映なさらないようにお願いします
既に長丁場に突入していた戦。
基地に用意された救護所は、とっくの昔に負傷者で一杯で、
手当ての為の物資も、寝床も、人手も…とにかく全てが不足していた。
そこを手伝っていた俺も、当然休む暇はなく、
一つの仕事が終われば、すぐに次の仕事の指示が飛んでくる。
血液やら膿やら…すっかり汚れて、嫌な匂いを立てる布の山を、
裏の焼却炉の中に放り込む仕事を終えて救護所に戻った俺。
さすがに少しくたびれて溜息を付いていた俺を、顔なじみの衛生兵が呼んだ。
寝転がる負傷者達を踏まぬよう気を付けながら、俺はすぐさまそいつの元へ飛んで行く。
「何?」
見上げた俺に、衛生兵が一人の負傷者を指し示してきた。
それは、親父の部下の一人。
何度か俺にナイフ投げを教えてくれた男。失敗した俺を不器用だと笑った男。
腹部を真っ赤に染めて横たわるその男は、
1時間以上も前に運び込まれてきたのにも関わらず、何の手当ても受けられていない。
救護室の入り口近くに放置されたまま、虚ろな瞳で天井を見上げている。
 
何故その男が手当てを受けられないのか…
俺はその疑問を口にはしない。
何故なら俺は、既にその答えを知っていて、
この場でそれを口にする事が、どれだけ無意味な事かを知っていたから。
そして、それは決してめずらしい事では無かったから。
 
それでもやりきれない思いは消し去れず、小さく肩を落す俺。
そんな俺の前に膝をつき、視線を合わせてきた衛生兵が静かに言った。
「…あいつを『楽に』してやれ」
俺の腰に下げられたナイフを、鞘の上から軽く叩く仕草。
その意味を悟った俺は、思わず呆然と衛生兵の顔を見上げる。
「…オレ…やった事ないよ…」
縋るように返した言葉は、無残なほどに震えていた。
何の感情も見えない、穏やかな表情で衛生兵が返す。
「やり方は知っているだろう?…何度も見ていたはずだ」
でも…と言いかけた言葉を飲み込んで、俺は唇を噛んだ。
戦場では上の者に口答えをしてはいけない。
やれと言われたらやらなければ、生き残れない。
逡巡する俺を勇気付けるように衛生兵が俺の肩を叩く。
「…大丈夫。教えられた通りにやればできる」
震える手で引き抜いたナイフ。
手に馴染んだ重さがいやに重く感じられた。
 
兎を絞めた事はある。誰かが誰かを刺すのも見慣れている。
それでも怖くて泣きたくなった。
泣いて縋りつけば、俺はこの役割から逃れられるだろうか…。
でも、仮に逃れられたとしてその後はどうなるのだろう…。
どちらにしろ男は死ぬ。
俺がどういう選択をしようとその結果は変わらない。
それに、怖気づいて役割を放棄すれば、俺はきっと「使えない」と見なされる。
使えない者は要らないから…きっと親父は、俺を知り合いの所に「捨てる」だろう。
 
ナイフを握り締めて、俺は横たわる男の側に膝をついた。
虚ろな男の瞳が俺と、俺の手にしたナイフに目を留める。
哀しげな…それでいてどこか安心したような色を浮かべて男は目を伏せた。
了承の気配。
喉の中央。気管を突き通して延髄まで…。
決して柔らかくはない体組織を確実に貫く為には、ためらいは不要だ。
失敗すれば、相手の苦しみを無駄に長引かせることになる。
大きく息を吸い込んで、俺は冷たい汗に滑るナイフを渾身の力で振り下ろした。
 
◆◆◆ 
 
ボロ布に包まれた男の身体が外へと運び出されて行く。
床の上に座り込んだままそれを見送る俺の肩を、衛生兵が軽く叩いた。
「水でも飲んで一休みして来い」
頷く俺。首の関節がギシギシと音を立てる。
震える膝を何とか支えながら立ち上がって、俺は水場へ向った。
軽くすすいだコップで水を受け、口元へ運ぶ。
…その瞬間…
自分の手から漂ってきた誤魔化しようのない鉄臭い匂いに胃が引き絞られた。
こみ上げてきそうになる苦い体液を、涙目になりながら、どうにか飲み下す。
怪我人の手当てを手伝った時にも、同じように手に匂いが移った事は何度もある。
もっと強い匂いが染み付いた事だって少なくはない。
それでも…その時の匂いは、これまでのどの時よりも強く俺の嗅覚を刺激した。
怖くて怖くて仕方が無い。
俺が殺した男の、断末魔の見開かれた瞳が…最期に強張った四肢の感触が…
いつまでも俺の周りに残っているような気がした。
 
けれども仕事は山積みで…
死者の運び出し、搬入された物資の片付け、洗い場の手伝い。
やらなきゃならない事は次から次へと降ってくる。
泣いている暇も、怖がってしゃがみ込んでいる暇も無かった。
それに俺は知っている。
動くことで、自分の仕事をこなすことで、
心の中に落っこちた、黒くて重い塊を外に追い出すことができるということ。
だから、一生懸命に働いた。
働いて働いて…夜はくたびれ果てて眠った。
 
 
翌日の夕方。前線に出ていた親父が帰ってきた。
運んでいた途中の荷物も放り出して、俺は飛びつくようにして親父の首にしがみつく。
抱きしめてくれる腕。暖かな体温。確かに“生きている”という気配。
嬉しくて堪らなくなって、擦り寄るみたいに分厚い肩口に頬を寄せたら…
自分の手と同じ匂いがした。
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